RPAを使った達人への新規データ登録
達人シリーズを使用して新規のお客様の税務申告関連業務を行う場合、データ登録が必要となり、基本的に複数のアプリケーションに同じような情報を何度も入力しなければなりません。
この入力に要する時間を削減するため、Excelシートに記入した法人名等の基本情報をRPAツールであるUiPathを用いて複数のアプリケーションへ転記・新規登録が自動で行えるような流れを作成してみました。
使用したアプリケーション
使用しているアプリケーションは、以下のとおりです。
- UiPath Studio Communityエディション
- Microsoft Excel
- 達人Cube
- 平成30年度版法人税の達人
- 平成30年版内訳概況書の達人
- 申請・届出書の達人(平成28年度以降用)
- 消費税の達人(平成30年度以降用)
今回は複数のアプリケーションにほぼ同様の情報を随時登録していくプロセスを作成したため、多くのアプリケーションを使用していますが、とくに異常もなくそれぞれを動作させることが可能な点が、UiPathを含めたRPA(今回の場合正確にはRDA)の大きな特徴です。
自動化した作業
今回UiPathに設定した手順を動画にしたものがこちらです。
使用したことはないのですが、以下の方法でもおそらく同様の結果が得られると思います。
- 「データ管理の達人」というアプリケーションを購入
- それぞれのアプリケーションに設定されている基本情報のインポート機能を利用
登録プロセスの作成手順
大体どのアプリケーションも同じような情報の入力が必要となるので、まずExcelシートに以下のような共通登録情報を記入します。
事業年度については、転記先の都合上、年・月・日で分けた方が簡単です。
数値や住所等、すべて適当な数値や名称を使用していますが、法人番号は正式なものでないと登録できなかったため、国税庁の番号を使用しています。
法人番号やe-tax/eLTAXの利用者識別番号は手で入力するとかなりミスをしやすいので、このようなプロセスを作るかどうかにかかわらず、可能な限り参照元(法人番号検索サイト等)からコピーペーストをして使用した方が安全性が高まります。
今回作成したUiPathのフロー図です。「データ登録」というブロックの中で、アプリケーションを起動させ、情報を転記してから終了させるという操作が行われています。
転記方法とExcel側の設定
どのアプリケーションも入力しなければならない項目は大体同じなのですが、入力する場所がそれぞれに異なっているため、Excelシートのデータをそのまま、順番にそれぞれに転記をさせようとすると動作しません。
以下は法人税の達人の入力画面ですが、「基本情報」や「計算情報」等、記入欄がタブで区切られているため転記の途中でタブの切り替えを行う必要もあります。
そこで以前、法人税申告書別表4や別表5(2)で設定した時と同様、それなりに(かなり)手間なのですが、以下のような処理方法をUiPathで組みました。
- 転記先を正確に選択するため、アプリケーションごとの入力箇所のIDをUiExplorerで確認
- アプリケーションごとに、転記項目とIDを対応させる表の作成
- 表中でタブが切り替えるポイントを確認
法人税の達人への転記用ID対応表の一部がこちらです。IDは仕方がないので手入力をせざる得ませんが、他はvlookup等で最初に作った共通登録情報シートを参照して値を取得しています。緑でハイライトした行が、タブを切り替えるポイントです。
これと同じようなものを、内訳書・届出書・消費税について作成しています。ID確認の手間がかかりますが、これ以外のアプリケーションへの登録を行いたい場合には、同様の表を作った上でUiPathに少し手を加えれば追加が可能です。
具体的な転記手順
動画上は法人税・概況書・届出書・消費税の4種類についてすべて登録をするようにしていますが、毎回これらすべての登録が必要なわけではないため、登録するかどうかに関してはフラグを設定しています。
UiPathでは、以下のような手順で転記プロセスを組んでいます。
- フラグがYの場合、該当アプリケーションを起動
- 各アプリケーション用に作成した表を配列として読みとる
- Whileアクティビティで、読み取った表のIDに対応している項目を順に転記
- タブの切り替えポイントで一旦Whileアクティビティを終了
- タブを切り替え
- 再びWhileアクティビティで続きを転記
- 登録を確定させてアプリケーションを終了(主にSend hotkey)
法人税の達人については、この他に地方税の申告に必要な事業所情報の登録するプロセスを追加しています。
事業所情報の登録上、市区町村コード(電子用)を入力する箇所がありますが、先に「提出先市区町村」を正しく入力しておくと市区町村コード(電子用)の「参照」をクリックした際に該当コードが選択された状態で表示されるので、UiPath側で難しい設定を組む必要はありません。
その他細かい調整
(1)登録ができない場合
とくに事業年度の欄については、転記をしてそのままだと適切に反映がされないのか、エラーとなり情報を登録ができない状態になることがあります。これを回避するためには、エラーを生じさせている該当の欄を一度クリックするようUiPath側で設定しておくと、達人側で自動補正が入るので登録が可能になると思います。
(2)フリガナへの対応
細かい点ですが、フリガナ→法人名等の各種名称の順番に転記をしてしまうと、名称転記後にフリガナ欄に変なフリガナが自動入力されてしまうようなので、名称→フリガナの順に転記をするように設定した方が安全です。
(3)バージョンアップへの対応
とくに法人税の達人は、毎年バージョンが更新されます。現在の最新版は平成30年版ですが、来年になれば平成31年版法人税の達人が公開されるはずです。
UiPathでは平成30年版の法人税の達人であれば、「app=’hj30.exe’」のように、アプリケーションの年度も指定することが多いと思います(違っていたら教えてください)。
達人の操作に関係する箇所は基本的にほぼすべてこの指定が行われているので、年度更新時にマニュアルですべてを修正するような設定にしてしまうと、手間がかかりすぎて使い物になりません。
この対応としては、事前にバージョン情報の箇所を変数化して、年度更新があった場合はAssignアクティビティで一斉に変更できるようにする等の対応をしておくと、後々のメンテナンス性が上がると思います。
法人税の達人については、変数にした上で、平成30年版(app=’hj30.exe’)を平成29年版(app=’hj29.exe’)と試しに変更してみましたが、動作していました。
今回の件に限らず、同じような情報を複数のアプリケーションやフォームに入力をする場面というのはよくあることなので、他の業務への応用も可能かと思われます。
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※この記事は、投稿日現在の日本の税法に基づく一般的な取扱いを記載したものであり、特定の事実関係によっては、税法上の取扱が大幅に異なることがあり得ます。この記事の情報に基づき具体的な決定や行為を起こす際は、当事務所、または他の税務プロフェッショナルに相談することをお勧めいたします。